2022.11.02 カレリア小話 (1) 11月とケクリ

>>カレリア小話 メニュー


Terveh!
11月に入り大分冷え込んできましたが、体調など崩されていないでしょうか?


「11月」はカレリア語で次のように表現します。
Pimiekuu [viena] 暗晦の月
Kylmykuu [livvi] 寒冷の月


11月の特徴として北部ヴィエナ方言地域では暗さが勝り、南部リッヴィ方言地域では寒さに軍配が上がったようですね。


さて、上映会まで3週間となりました。
カウントダウンを兼ね、お待ちいただく間にカレリア小話をお届け致します。


本日のテーマは
Kekri [viena]
Kegri [livvi]
ケクリ(収穫祭)
です。


以下は、Wikipedia カレリア語リッヴィ方言ページからの引用です。


---
Kegri on vahnu karjalaine pruazniekku, kudai piettih 1.-2. kylmykuudu, konzu kai kezäruavot loppiettihes da algavuttih uvvet – talviruavot.
Pruazniekku oli tuttu kaikile: liygiläzile, vienalazile, lyydiläzile da Tverin karjalazile.
Tänäpäi pruazniekan piendyperindö unohtui, vähä ken karjalazis mustau sidä.

Kegri – Wikipedii (wikipedia.org)
---
ケクリとは、11月1~2日に祝われるカレリアの古い祝祭で、このとき夏季の労働すべてが終わり、新たに冬季の労働が始まります。
この祝祭は全カレリア地域の人々(リッヴィ、ヴィエナ、リュード、トヴェリ・カレリア)に知られたものでした。
今日ではこの祝祭の伝統的なしきたりは忘れ去られ、少数のカレリア人が覚えているのみです。

---


ケクリは、古くは収穫を終えた農民たちのお祝いであり、農耕と牛の加護者であるケクリ神に敬意を表する意味も含んでいました。
このケクリ神については、フィンランドの牧師であり「フィンランド語の書き言葉の父」と呼ばれるミカエル・アグリコラ(1510頃-1557)が、著作『ダビデの詩編(Dauidin psaltari)』(1551)の前書きに列記したキリスト教以前のフィンランドの神々(ハメ地方、カレリア地方)の名前リストにも含まれています。
---
Käkri se liseis Carian casvon.
カクリ(ケクリ)は牛を育んだ.

---


9月末~11月初めにかけ、収穫を終えた者からケクリ神に恵みの謝意を示し、間もなく始まる冬を待つ間の休息期間として過ごしてきたものが、暦の制定とともに徐々に統一した期間に祝われるようになりました。
今では上述のとおり11月1~2日に祝われています。
なお、収穫を終えたことで一年が終わるため、古くはケクリが年末と新年の終わりも表していましたが、現在ではクリスマスにとって代わられてしまいました(ちなみにカレリアは正教のため、クリスマスは新年を迎えた後に祝います)。


ケクリ期間には、あの世の者たちが現世を訪れることがあるとも言われ、特別なまじないがかけられました。


中世に村のお祭りとしての意味合いが強くなると、村の男たちが全身を毛皮で覆って恐ろしい装いをし、「森からケクリがやって来るぞ!」と子どもたちを怖がらせに出回りました。
フィンランドではケクリプッキと呼ばれているこの化身、まるで東北のナマハゲのようですね。


ケクリが終わると、女たちは糸を紡ぎ、衣類を縫い、刺繍をし、男たちは漁網や樹皮のカゴを編んだりと「冬の仕事」を始めます。
暗く(pimie)寒い(kylmy)11月をそうやって過ごすと、本格的な冬が訪れるのです。


実りの秋、カレリアの人々がケクリ神に感謝を示してきたように、それぞれの産物を育んでくれた生産者の方々と自然の恵みに感謝して、秋の味覚を楽しみましょう。


それでは良い一日を!
Hyvyä päivän jatkuo kaikilla!
Hyviä päivän jatkuo kaikile!


>>カレリア小話 メニュー